国指定重要文化財 中空土偶 カックウ 


  中空土偶 カックウ(茅空)
(複製)

 カックウ UP
  この中空土偶は1975年に南茅部 地区、著保内野遺跡の畑となっていた地下から発見され、19
79年に国指定重要文化財に指定されました。

 南茅部の茅の字をとり、茅空(かっくう)という愛称をつけました。

 カックウは約3500年前の制作になるものと推定され、高さ43センチ、幅20センチ。残念ながら両手
は失われていますが、当時の衣装と思われる文様がくっきりと刻まれ、全面にが彩色されていたよ
うです。

ところでこの土偶はどんな目的で制作されたのでしょうか。

その答えを読んでいた本の中に見つけました。

 世界神話事典(角川書店・平成六年)、作物の起源に載っていた吉田敦彦先生の著作の概略
を紹介いたします。

 内容に不備があればすべて私の責任です。

 
 縄文時代の土偶はほとんどすべて破壊された形で出土しており、しかも同じ地点で出た破片を組み合わせても完成品は復元できません。 故意に破壊
し、さらに破片をバラバラに散らしていた可能性が大きいように見えます。 
 縄文人はなぜそのような手間のかかることをしていたのでしょうか。
 
 吉田先生は縄文時代中期には、縄文人がハイヌヴェレ型作物起源神話を持っていたからではないかと考えておられます。
 ハイヌヴェレ型神話は東南アジアからアメリカ大陸まで広く分布している神話で、日本神話にも含まれています。 「古事記」に現れる女神はオオゲツヒ
メ、「日本書紀」の女神はウケモチが主役になります。 大切な客神の接待に体中からご馳走を出しているところを客にみられ、殺されてしまう食物の女神の
物語です。この神は、死んだ後でその体から五穀や桑蚕牛馬を生み出し、人間に与える役目を負っています。すなわち穀物栽培、農業の守護神です。

 生贄を捧げて豊年を願う儀礼は古くからあり、動物の犠牲や人身御供などの血なまぐさい習慣も世界各地で行われていました。 この儀式の元になった
のが、ハイヌヴェレ型神話なのです。 

 栽培農業を始めた縄文人が、自らが持つ伝承神話の中に作物起源の説話を作り上げたのは当然です。身を殺して作物を与えてくださった神への信仰
が、生贄を殺すことで、生贄は神と同等の力を授かり、豊かな実りを約束してくださる、と考えられたのでしょう。 縄文人は神への捧げ物として人に似せて
土偶を作りました。それを破壊して栽培地に撒いたり埋めたりすることにより、穀物の再生を祈願したのです。 そして破片の一部を住居に持ち帰り、祭って
いたものが住居跡から発見されています。


「かっくう」をみても「ひとがた」としての出来栄えは素晴らしいものです。
 明らかに専門職の手によって作られています。 毎年かなりの数のものを作っていたに違いありません。しかし発見される土偶やその破片があまりにも少
ないことを考えると、私は吉田先生の著作に納得してしまうのです。

 ところで、「古事記」によるとオオケツヒメを殺すのはスサノヲになっています。 そのスサノヲが出雲に降りてから、ヤマタノオロチに生贄として捧げられるは
ずの、クシイナダヒメを助ける役目に回ります。クシイナダヒメがその名の通りイナダの守り神とすれば、豊穣を祈って我が身を犠牲にするオオケツヒメに代わ
る神でした。 殺す神から救う神へ、この支配者であるスサノヲの変身は、人身御供の風習の名残とその残酷な儀式が廃止された経緯をうつしている感じが
します。


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